避難所の運営、物資の配布、炊き出しの栄養バランス、女性や子どもなど特別な配慮が必要な方々への対応...。東日本大震災支援に関わった多くの国際協力NGOが悩みました。
被災者にとって何が「正しい」支援なのでしょうか?
被災者が安定した状況で、尊厳をもって生存し、回復するために、あるべき人道対応・実現すべき状況とはどのようなものでしょうか。
それを私たちは「援助の質(quality)」が高いと言います。そして援助の質を保証する実施者の責任を「アカウンタビリティ(accountability)」と呼びます。
我たちNGOは人道機関として、被災者全て―女性と男性、少年と少女―の権利を認識しながら、人間性の原則と人道上の責務に基づいて提供します。これらは、国際人道法や人権法、難民法の規定に反映されている、被災者の権利であり、以下の三つを含んでいます。
● 尊厳のある生活への権利
● 人道援助を受ける権利
● 保護と安全への権利
これらの権利を実現するために、人道援助を行うNGOのグループと国際赤十字・赤新月運動によって1997年に開始されたのが「スフィア・プロジェクト(または「スフィア」)」です。冷戦終結後の1990年代、世界各地で内戦が頻発する中、国際機関やNGOが行なう人道支援は、確かな役割を果たす一方で、支援が軍事目的に転用されるなど、紛争の長期化・複雑化に与える悪影響も指摘されました。この課題に取り組むため、スフィアでは、人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準を定めて「スフィア・ハンドブック」にまとめました。
このハンドブックは現在第3版が発行されていますが、初版からこれまでの改訂プロセスには、世界各国の政府や国連機関を含む幅広い組織・機関や個人が参加し、人道セクター全体での協議が重ねられました。また、人道対応において計画・管理・実行に関わっている人道機関のスタッフやボランティアが、プロジェクトの提案やファンドレイジングを行う際にも、自分たちの活動が本当に妥当なものかを検証するために、この基準を活用しています。
● NGO/NPO/任意団体等、災害支援に携わる全ての方へ
「スフィア・ハンドブック」は、人道対応における計画・実行・モニタリング・評価のために作られています。支援活動を行う際に最低限満たさなければならない基準とそれを可能にするポイントが書かれているので、ガイドラインとして参照してください。
また、支援活動を巡り行政当局や資金提供者などへ協力を働きかける際にも、その活動の妥当性や正当性を示す根拠として活用できます。
● 寄付・助成金の提供者の方へ
提供した資金によって実施される支援活動は、はたして質の高いものなのでしょうか。計画・報告内容の検討をする際には、資金提供先の担当者と一緒に、スフィアの基準を踏まえて話し合ってみてください。
● 政府・地方行政・自治体の防災担当者の方へ
ハンドブックには、「給水・衛生・衛生促進」「食糧の確保と栄養」「シェルター(避難所)・居住地・ノンフードアイテム(食糧以外の生活物資)」「保健活動」の分野で明確な最低基準が示されています。災害対策や危機管理計画を立てる際には、是非このガイドラインを参考に役立ててください。
●スフィア・ハンドブック(冊子)の入手をご希望の方へ
JANICではご希望の方に、スフィア・ハンドブック(日本語版)冊子の配布を行っています。
入手をご希望の方はこちらからお申込みください。冊子は無料ですが、送料はご負担をお願いしています(着払い)。
問合せ先:capacity1@janic.org
【参考リンク】
JANICウェブサイト 国際基準のページ
スフィア・ハンドブック日本語版第3版 (PDF: 5.13MB)
The Sphere Projectウェブサイト